私は普段は企業の中でデータ分析や機械学習を扱った業務に携わっています。所属している企業はまだしも、他社の、しかも今データ分析を活用して売り上げを伸ばしているところの中を垣間見たい、という気持ちから【ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか】を読みました。 本書を読むことで、自分の強みを把握し、データを活用して効率的に新しい分野で活躍するまでを疑似体験できます。

目次

本の概要

本書ではワークマンが商品を変えずに売り上げを伸ばした方法について述べています。

ざっくりとまとめると、ワークマンはもともとできていた強みがあり、それを活かして業態展開するために、新しくやることとして、データ分析に基づく意思決定を社内に広く浸透させた、ということになります。

もともとできていたこと

  • 職人御用達の高品質な商品を販売していた
  • すべてをマニュアル化し、誰でも運営できるシステムを確立した。

新しくやったこと

  • 企業として目指すところを示すビジョンを策定し、中長期で業態転換することを内外に示した
  • データ分析を導入し、効率的なオペレーションおよび標準化の見直しを進めた
  • SNSを活用し、熱烈なファンを増やした

もともとワークマンは職人が愛用するような商品を販売するために徹底的にマニュアルを作成し、フランチャイズ店を展開することで働く人のための作業服を売るという業態で売り上げを立てていました。

さらに、職人が使うような高品質な商品が一般人にも受け入れられることを知り、業態をファミリー向けにも展開することを決めます。 このとき、中長期ビジョンを策定します。 ビジョンでは時価総額の向上、新業態展開、データ分析、従業員への報酬などについて触れ、会社として本気で進めていることを印象づけています。

データ分析やインフルエンサーを活用して新業態を効率的に開拓したことから、商品を変えずに売り上げを2倍伸ばしています。

要点

どうやってデータ分析を浸透させた?

ワークマン直営店は新人社員のトレーニングストアとして運用されています。 トレーニングするときに気を付けるときは業績ではなく、社員の能力が伸びたかどうかを見ています。 能力については、店に立つうえでの姿勢を基本的に重視し、そのうえでデータが活用できるかどうかを見ます。

データ活用については、AIを駆使した高度なデータサイエンスではなく、エクセルで定型的な分析ができればよく、日々の販売データを見て、次にどういう施策をすればよいのか考えられるようにすることを全社員ができることが大事、という考えをもってデータ活用の普及に取り組んでいます。

ワークマンのもともとの強みを活かしつつ、それを新業態へ展開するために徹底的に効率化をしているという点が印象的でした。 また、この業態展開でうまく言った見返りとして、従業員、フランチャイズにしっかりと報酬を与えることで、良いフィードバックループが回っていると感じます。

データ分析ができたことでどんないいことがあった?

データ分析が社内に広く浸透することで、従業員が各々の勘や知見によらず、データに基づいて行動できるようになり、より無駄の少ないオペレーションができたということが挙げられます。 オペレーションではたとえば、フランチャイズ店の店長に仕入れるべき商品を数字を使って説得するようになりました。

ほかの事例も紹介します。もともと職人向けだったので駐車場の台数も少なくても問題ありませんでした。職人は目的の商品を買ったらすぐに帰るためです。しかし、ファミリー向けに業態展開したことで必要な駐車場の台数も増えることをデータから観測しました。

職人向けを前提としたマニュアル(ワークマンでは店舗ごとの駐車場台数もマニュアル化されているそうです)も、前提が変わったことでマニュアルを修正しました。データを蓄積していたからこそ、これまでの標準を大胆に変えられたそうです。 今まで当たり前だったことでも、前提変わることで、適切なものに変えるための根拠ができたということですね。

おわり

本記事では【ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか】の概要を紹介しました。 ワークマンはもともとオペレーションがうまく、かつ職人愛用の高品質な衣服を販売していました。これが一般受けもよいということを知り、ファミリー向けにも展開するためにデータを分析して効率的に意思決定を進めていました。

データ分析を社内に広く浅く浸透させ、全体的に効率的なオペレーションを進めている点が非常に参考になりました。

著者のプロフィール

本書の著者は酒井大輔氏です。 プロフィールをAmazonから引用します。

京都大学法学部卒業後、金沢で新聞記者に。北陸新幹線担当として経済部、社会部で開業報道を担う。2017年2月、日経BPに入社。日経トレンディ編集部に加わり、五輪連載「Road to 2020」を担当。18年8月から日経クロストレンド兼日経トレンディ記者。20年6月から日経クロストレンド記者。


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